- 独り言
相互運用性という課題
先日、日本システム監査人協会の月例研究会に参加しました。
テーマは防災DX。
色々と思うところがありました。
内容のメインとしては、防災対策のシステムが自治体ごとにバラバラな上、DXも進んでいないので、これを急がなければならないというものでした。
講演いただいた方のお話が大変分かりやすく、自治体に無知な私でも、その危機的な現状と山積している課題が手に取るように分かりました。
その一方、私が最も気にかかったのは少し別のところでした。
それは、「Interoperability」。
日本語に訳すと、「相互運用性」です。
災害が起きると、各地から色々な組織が被災地に入ります。
自衛隊、医療チーム、他の地域の自治体、NGO、NPO……。
そのそれぞれが、それぞれ異なるシステムを使用しています。
各組織が、自前のシステムを使用することは、別に悪いことではありません。
システムの多様性を考えれば、むしろ歓迎されることです。
問題は、『それらのシステムが連携できないこと』にあります。
例えば、今回の講演の例でも挙げられた能登半島の震災。
通信インフラや道路が断絶され、限られた情報しか入ってこない中、各組織は支援活動のために情報を欲しがっています。
そのような時に、各組織のシステムがうまく連携できれば、複数の情報が合わさって迅速かつ効果的な支援活動や意思決定ができます。
しかし、そうはならなかった。
各システムは自前のデータ形式で、自身に必要な情報しか管理していないために、うまく連携できなかったのです。
このように、「相互運用性」が確保されていないと、必要な情報を必要な時に必要な人(場所)へ届けられない事態が発生します。
では、わが身に振り返って、普段の開発案件で「相互運用性」を意識することはあるでしょうか?
自治体システムに深くかかわったことはありませんが、少なくとも商用の一般システムで「相互運用性」を意識したことはなかったと思います。
それなら発想を変えて、これまでのシステムに「相互運用性」を組み込むとしたら、どんなことが考えられるでしょうか?
一番有効そうかなと思うのは、会社員時代に開発した「自治体海上調査補助ツール」でしょうか。
このツールでは、海上調査の結果を、地図上のマス目(緯度、経度で区切ったもの)に入力できます。
もし、今このツールを開発できて、予算が潤沢にあるなら、世に出回っているGIS(Geographic Information System、地理情報システム)を導入することができそうです。
これを導入し、情報の「相互運用」ができれば、例えば、海上の調査結果と天候データを合成して、AIに分析させることもできるかもしれません。
そうすると、人間が目で観測して記録する以上の情報が得られる可能性があります。
新たな価値を手に入れるという意味では、これは立派な「DX」につながるはずです。
今後、日本はどんどん少子高齢化が進みます。
これまで活躍してきたマンパワーは、確実に減っていくわけです。
となると、限られた情報を最大限に活用して必要なマンパワーを減らさなければ、物事が回らなくなるわけです。
そこで重要になるのが「相互運用性」だと。
地理ならGISなどの情報に紐づけ、災害関連であればEEI(Essential Elements of Information)で、システム同士が連携できるようにしておかなければならないと。
今回の内容を受けて、そのように感じました。
一開発者であっても、「相互運用性」を意識するのは大切ですね。
それでは、久しぶりに独り言のネタができた、山本慎一郎でした。